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オトーサンが死んでちょうど二週間。いなくなったことにも慣れた、というより悲しみに浸る間もなく過ぎたというべきか。あれからマーのサカリが本格化して、ご近所とごたごたを起こして、手術して、クロの目がおかしくなって、抜糸して・・・。なんかばたばたするうちにあっという間に過ぎてしまった。
それでもこうしてマーを撫でていると、オトーサンもすごく甘えん坊なネコだったのに、こんな風にしてじっくり撫でてやることはなかったなあと思い返してしまう。とにかく全身ウンコ臭かったから、たまに頭や顎を撫でるくらいで、体中を撫で回してやったのは死ぬ直前だけだったような気がする(なぜか死ぬ二日前から臭くなくなっていた)
痩せてて禿げ禿げで臭くて、見栄えはどうしようもない奴だったけど、頭だけは恐ろしいほどよかった。 目覚まし時計や安定の悪い荷物を利用してマーやノラを追い払ったことは前にも書いた。それ以外にも、膝の上で寝ているときに私がトイレに立つと、「退け」と言われたものと思ったのか抗議の声を上げて逃げ出していたんだけど、こたつに戻ってきて「ごめんね、もういいよ、おいで」と呼び戻すことを二、三度繰り返したら、それからはおとなしくこたつの前で待っていた。 とにかく一度怒ったらしっかりと覚えていて、二度と同じことを繰り返さない。 いつだったか私がちょっと席を立った隙にキーボードの上に上がっていて、ムンクの叫び状態になった私は相手がネコであることも忘れて、「液晶が点いてるときはキーに触っちゃダメなのー!!」と怒鳴ってしまった。それからオトーサンはどうしたか。相変わらずこたつに上がってPCを踏んでいく(タンスの上に上がる近道なのだ)。ただし手前と縁に足を置いて、絶妙なバランスでキーにはまったく触れず通っていった。それを目にした私はしばし唖然ボーゼン。確かにキーにさえ触らなきゃ問題はないけどね。その通りに実践された日には、ちょっと鳥肌が立った。
それほどに頭がよくて、性格も温和だったオトーサン。当初は「誰かが捨てた」と思い込んでいたけど、だんだんとこんないいネコを年取って体の具合が悪くなったというだけで捨てるだろうかという思いに変わっていった。で、もしかしたらこいつは一人暮らしのお年寄りに飼われていたんじゃないか。その人が死んで、子供や身内はネコが嫌いで追い出したのでは? だとしたら放浪中の一時期を除けば、オトーサンの一生は幸せなものだったのかもしれない。
本当のことはもうわからない。異様に人間を怖がっていたから、もしかしたら辛いことばかりの人(猫)生だったかもしれないけど、そう考えたほうが残された者にとっては慰めになる。
それにしてもどうして私の家を終の棲家に選んだの? 追い払っても追い払っても、お向かいの塀の上で何日もずーっと蹲ってた。もし私が無視し続けていたら、どうするつもりだったんだろう。最後には私が根負けすると知っていたんだろうか。 謎だらけのネコだったけど、一番の謎はそのことだ。もしもいつか再会できる日がくるなら、ぜひ聞いてみたい。その日までしばし、さようならオトーサン。
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